自然は大きなホスピタルと言う。マイナスイオンやフィトン
チットがあふれる自然のなかで過ごす非日常・無為の時間
は、たしかな至福の刻である。そこが、100%の天然温泉
を、いつでも楽しめる宿であれば、旅の価値は格段にアップ
する。
「よしだや」の湯は、約660年前発見という有福温泉のな
かでも、隣接する公共の外湯「御前湯」とともに出色であ
る。浴室の壁一枚をへだてる岩壁から湧出する源泉が、清掃
時を除いて、24時間、浴槽を満たしつづける。何も足さ
ず、何も引かず、加温も加水も、ろ過も循環もしない。いわ
ば天然の壁(カベ)湯である。
42.2℃のアルカリ性単純温泉に、のんびり湯浴みしたあと
は、たしかに肌がツルツルするし、いつまでもホカホカして冷
めにくい。「美人・美肌の湯」として広く知られるだけでなく、
「皮膚病」や「神経性リウマチ」「慢性消化器病」などに湯効
があるといわれるのも納得できる。2,3泊の現代湯治なら、
有福温泉では「よしだや」をおいてない。本物の温泉を見分け
るお客がひいきにするわけである。
山の斜面にそって配置された3層の建物や10室の客室は、古
き良さと更新された設備や備品がマッチングしている。これか
らも、心身を健やかにする本物の畳や珪藻土、天然木材・古材
などを多用する改修・改装をかさねて、次の100年へ、宿の
魅力が磨きこまれていくことだろう。
平日、2人の場合、1人8800円で宿泊できるのも魅力。厨
房から離れ、階段が多いにもかかわらず、朝も夕も、地元産の
新鮮な野菜や魚介類の持ち味を引き出すように調理された料理が、経営者や、「おもてなし」をする人の笑顔とともに客室や
会食室で供される。本物の温泉宿を見抜く人々が、「よしだや」を定宿に選んでいるわけがよくわかる。
(2010-07-29)
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